Amulette_Vol11

今回は、女性特有の症状でもある 「骨盤臓器脱」についてのお話です.「骨盤臓器脱」という言葉を聞いたことはありますでしょうか. 臓器?と聞くだけで、何かよからぬ病気かと感じてしまいますね.
初期の段階ではちょっとした症状から始まりますが、のちに病気としても生活を脅かしてしまうものでもあります。
このような症状は高齢になってからと思われるかもしれませんが、 そのようなことはなく、特に産後ケアとして初期の段階での対処が必要です.

■骨盤臓器脱 (日本泌尿器科学会)とは、

膣前壁、膣後壁、 膣円蓋 (子宮頸部/子宮) または膣子宮摘出後の膣断端の下垂と定義づけられています。 具体的には、膀胱瘤、直腸瘤、子宮脱、直腸瘤、膣断端脱などで、 女性特有の疾患です. 脱出がない場合を0期とし、 ある場合は脱出の先頭部分の位置を処女膜面を基準にI期からIV期に分類します. と記されています.

•骨盤臓器脱の自覚症状

·臓器の下垂感: 下腹部から会陰の重さを感じる (特に夕方など)
・異物感 : 何かが会陰のあたりに下りてくる感じやピンポン玉などが挟まる感じ
・排尿、 排便困難 : 排尿や排便が出しにくい
・尿意切迫感や切迫性尿失禁 トイレが近くなったり、 残尿感があるなど

●骨盤臓器脱の症状を呈する背景や治療

原因には様々ですが、主には、出産 (特に経膣分娩) や加齢による骨盤底筋への負担や筋力低下、 閉経による女性ホルモンの関係、 肥満や慢性的な咳やクシャミによる腹圧調整や骨盤底への負荷などが挙げられます.
治療では、保存療法と手術療法があります. 保存療法としては、腹圧の調整など骨盤底に負担をかけない日常生活を送ること、また骨盤底筋の体操となります. 他にペッサリーなどあります.
個人で対処する方法はありますが、 症状の重症化 (1期以上)に伴い手術療法の検討が必要となります.
ステージII期の段階では大抵の方が下垂感などの自覚症状があります. 保存療法としての骨盤底リハビリテーションの対象はこの段階までとなります. 何より、 早期に対処することが望ましい病気となります.
産後は出産による負担が高いために、 一時的な症状で収まる方もいるようですが、 その時期にしっかりと対応することが、 加齢に伴う症状を軽減するためにも大切となります.

※最後までお読みいただきありがとうございます。内容については、誤解が生じないよう学術的背景等をもとに細心の注意を払っていますが、すべての方に対して、情報の正確性、完全性、有用性について保証するものではありません。可能な限り有益な情報を配信できるよう努めておりますこと、ご理解くださいますようお願いいたします。

〜けんさんから一言〜

高齢女性方の既往として、子宮関係や骨盤臓器脱などを有している方が多くいらっしゃいます. 女性特有の症状・病気ですが、なかなか周知されていない現状もあります. 「あれっ」と思った時には相談でも良いのでされることが必要です.
この度、当院泌尿器科にて「骨盤底リハビリ外来」を開設しました. 私と看護師にて対応させていたく、専門的な骨盤底リハビリテーションとなります. 少しでも、 産後の尿もれ 湯もれ、 頻尿や今回ご紹介した骨盤臓器脱症状を有する方々のお力になれればと思っています.
それでは、次号も楽しみにしていてくださいね。


★この記事を書いた人★

国保依田窪病院 理学療法士 山﨑 健一(けんさん)

ウィメンズヘルス・メンズヘルスの専門分野を学んでいます

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